- 2021/08/24
イマヌエル・カント(1724-1804)
の認識論の革新性と、
彼がもたらした
「近代哲学の夜明け」
について解説します。
カントは、
それまでの哲学が抱えていた
「世界をありのままに知ることはできるのか」
という問いに対し、
認識の仕組みそのものを問い直すことで
決定的な答えを出しました。
1. 時代背景:経験論と合理論の対立
カントが登場する前の哲学界は、
2つの大きな潮流に分かれていました。
大陸合理論(デカルト等)
理性こそが真理への道であり、
数学のように
確実な知識を積み上げるべきだと考えましたが、
証明できない前提(神など)から出発する
「独断論」
に陥る危険がありました。
イギリス経験論(ヒューム等)
すべての知識は
経験から得られると考えましたが、
ヒュームによって
「因果関係さえも主観的な推測に過ぎない」
とされ、
何も確かなことは言えない
「懐疑論」に行き着いてしまいました。
2. コペルニクス的転回:認識の逆転
カントは、
この行き詰まりを打破するために、
認識の主客関係を逆転させました。
従来
人間の認識が
「対象(外の世界)」に従う
(=対象をそのまま写し取る)
カント
「対象」が人間の認識の仕組みに従う。
これを、
天動説から地動説へと発想を逆転させた
コペルニクスになぞらえて
「コペルニクス的転回」
と呼びます。
人間は世界をそのまま見ているのではなく、
「人間特有のフィルター」
を通して世界を構成しているのだと考えたのです。
3. 現象界と叡智界
カントは、
私たちが関わる世界を
2つの領域に分けました。
現象界
人間の認識能力(感性・悟性)
によって捉えられた世界。
科学が成立するのはこの範囲です。
叡智界(物自体)
フィルターを通す前の、
ありのままの存在。
人間はこれを知ることはできませんが、
存在していると考えます。
4. 認識のプロセス:感性・悟性・カテゴリー
人間が「リンゴがある」と認識するまでには、
先天的な仕組みが働いています。
1. 感性
「時間」と「空間」
という直観の形式を通して、
情報を受け取ります。
2. 悟性(カテゴリー)
受け取った情報を、
生まれながらに備わっている
12種類の思考の枠組み(カテゴリー)で
整理・統合します。
例えば
「1つの(数量)」
「〜だから〜だ(因果)」
といった判断は、
人間側の機能です。
このように、
経験に先立って
備わっている先天的なものを
「ア・プリオリ」と呼びます。
まとめ:理性の限界と科学の正当化
カントの功績は、
理性が「何でも知ることができる」
という幻想(独断)を捨てさせ、
同時に「何も信じられない」という
絶望(懐疑)からも救い出したことです。
彼は、
「人間は物自体を捉えることはできないが、
人間共通のフィルター
(カテゴリー)を通した
現象界においては、
客観的で普遍的な科学的知識が成立する」
ことを証明したのです。
【後編動画】