- 2022/01/06
カントの道徳哲学の入門書とされる
『道徳形而上学原論』
(または『人倫の形而上学の基礎づけ』)
の内容を要約します。
本書は、
カントが「道徳の最高原理」を突き止め、
普遍的な道徳哲学を打ち立てるために著した、
近代倫理学の基礎となる作品です。
1. 普遍的な道徳の追求
カントは、
道徳とは経験や環境によって変わるものではなく、
人間にア・プリオリ(先天的)に備わっている
理性の法則であると考えました。
善意志
無条件に「良い」と言える唯一のものは、
正しいことをしようとする
「意志」そのものです。
義務
自分の感情や利益(幸福)のためではなく、
道徳法則に従うという
「義務」から行動することこそが、
真に道徳的な価値を持ちます。
2. 定言命法:無条件の命令
カントは道徳的な命令を「命法」として
2つに分類しました。
仮言命法
「もし〜したいなら、〜せよ」
という目的のための手段としての命令。
定言命法
「〜せよ」
という、
いかなる条件も付かない絶対的な命令。
道徳はこれに従うべきです。
3. 人格を「目的」として扱う
カントは道徳の指針として、
人間(理性的人格)の扱いについても述べています。
手段ではなく目的
「君の人格、
および他のあらゆる人の
人格のうちにある人間性を、
常に同時に目的として扱い、
決して単に手段としてのみ
扱わないように行為せよ」
目的の国
すべての人がお互いを
「目的」として尊重し合い、
自ら立てた道徳法則に従って
生きる理想的な共同体を、
カントは「目的の国」と呼びました。
4. 具体的な禁止事項
カントは、
普遍的な法則として成立し得ない
(矛盾が生じる)行為を
「絶対にやってはいけないこと」
として挙げています。
① 自殺
自分の生命を、
苦痛を逃れるための「手段」にすることになる。
② 返せない借金(嘘の約束)
全員が嘘をつけば
「約束」という概念自体が崩壊する。
③ 才能を磨かないこと
理性的な存在として、
自分の能力を向上させることは義務である。
④ 困っている人を助けないこと
自分がいざ助けを必要とした時に、
誰も助けてくれない世界を望むことはできない。
まとめ:現代への意義
カントの道徳哲学は、
個人の恣意的な感情や状況に左右されない
「普遍的な正しさ」の土台を築きました。
『道徳形而上学原論』は、
人間がいかに自由であり、
かつ責任ある理性的存在として
生きるべきかを示す、
永遠の教訓に満ちた一冊です。